第1章 1.夢の終わり
今日も飛雄は、レギュラーと準レギュラー以外は入れない練習試合に入れてもらっていた。普通なら対人パス、サーブやスパイク練、3対3の練習以外は入部したての1年生は入れてもらえないのに。そのくらい、飛雄は群を抜いてバレーが上手かった。いわゆる天才なのだ。
そんな飛雄に厳しめな徹は努力の人だった。すぐに技術を呑みこみ、自分のものにするようなタイプではなく、たくさんの練習を重ねて咀嚼して、消化をする。誰よりも努力して技術を磨き上げてきたのを私は知っている。
徹は天才・飛雄を明らかにライバル視していた。先輩と後輩という関係を超えた見えない何かが2人の間にはあった。一見、飛雄という天才をやたらとひどく毛嫌いしているようにしか見えないのだけど。
でも、私はどちらも素敵だと思っていた。私にはないものを持っている飛雄に憧れるし、誰よりも努力が出来て責任感の強い徹にも尊敬する。
私も、彼らを見習ってもっと上手くなりたい。高校は女子バレー屈指の強豪校である新山女子を狙っている。高い壁に登り続けたいから。徹や飛雄みたいになりたいから。
女子バレー部も対人、サーブ、スパイク、チャンスボールのレシーブ練などを一通り終えて、練習試合に入る。
「さ、来―い!」
今日は調子がいい気がする。サーブの精度も高いし、スパイクもちゃんと決まっている。
この調子、ずっと続くといいな。もっと高くスパイクを飛んで、たくさん決めたい。もっと飛ぼう。頂のさらに天辺に登れたら……。
「ごめんっネット近い――」
セッターがそう叫んだのが聞こえた。
私はボールに夢中になっているあまり、気が付くタイミングが遅れた。足が滑って、スパイクを打つとき、バランスを崩した。
「!!」
「痛っ……!!」
何が起こったのか分からなかった。痛すぎて、記憶まで飛んでいた。
気が付くと、チームメイトに、監督、徹も、飛雄も私の元に集まっていた。
「!?」
「急いで救急車!」