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彩雲の糸

第5章 5.烏たちの涙


 もし、私が怪我をしなかったとして、新山女子に入ったとしたら、ちゃんとスタメン入りできたのだろうか。
「ひぐまん、頑張れ……!」
 たらればの話をしても仕方ないのは分かっているけど、レベルの高い圧倒的な新山女子の試合を前に、意味のない妄想は止められなかった。

 第2試合の対伊達工戦は、潔子ちゃんがベンチに入るため、私は烏野高校の女子バレー部と一緒に試合を応援することになった。道宮さんはすっかり元通りになっていた。
「さん、応援頑張ろう!」
「道宮さん、試合お疲れ様。うん、頑張ろう」
 気持ちを切り替えた道宮さんは本当に強い子だと思った。

 試合は勝利した。周囲はまさか烏野が勝つとは、といった雰囲気だった。だけど、今年の烏野は違う。今年は飛雄たち個性的で頼もしい1年生の獲得に、武田先生の尽力のおかげで、コーチも味方に付けた。強豪校と戦える環境が整えられ、烏野は強くなった。
 伊達工のブロックというトラウマを克服した旭の強さを尊敬したし、勇気づけられた。
「旭! やったね」
「おう」
 旭は控えめに、だけど嬉しそうに笑っていた。

 学校に戻り、明日の確認をしてから解散となった。いつも通り賑やかな日向とは対照的に、飛雄はずっと無言だった。若干ピリピリしていた様子だったけど無理もない。明日は徹との初めての公式戦なんだもの。
 中学時代の飛雄は徹を手本としてきた。(徹自身は何も教えてないとは思うけど)そんな相手に勝負を挑むのだから、いろんな思いはあるはずだ。

「、明日は負けないからね。俺のプレー、ちゃんと見ててね。応援よろしく!」
 学校を出ようとしたところに、徹からメッセージが送られて来た。
「烏野も負けないよ! ちゃんと試合の記録はするから見てるね」
「違う、そういう意味じゃない」
「え? どういうこと?」
「鈍感! バカ!」
 急にバカと言われて不服に想っていたところに、飛雄に話しかけられた。
「メッセージ、及川さんですか?」
「あ、うん。明日は負けない、だってさ」
 画面、見られちゃったかな。私はさっとスマホをポケットにしまった。
「そうですか」
「明日は頑張ろう。勝とうね!」
「はい」
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