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彩雲の糸

第4章 4.夢を見る資格


「」
「あ、旭……」
「何してんの?」
 合宿明けの放課後、体育館の前でぼーっと立っていたところを旭に見つかった。ちょうど良い。旭には聞きたかったことがある。旭が戻って来たとき、ちょうど私は不在だったから詳細を聞けずにいた。
「旭はさ、どうやってまたバレーをやりたいって思えるようになったの?」
 旭は一瞬眉をピクっとさせたが、少し考えてから語ってくれた。
「仲間たちにバレーがまだ好きだってことを、気づかせてもらったから……かな」
「好き、か……」
「はどうしたい?」
 私たちは体育館の外の隅の方へ行き、腰を掛けた。あんまり人に聞かれたくない話だというのは、旭も分かってくれた。
「一度バレーを棒に振って、3年経ってるから。いろんな人に迷惑をかけた身なのに、こんな私がまたバレーをやってもいいのかなーって思ってる。それに、今更始めたって、下手で周りに迷惑かけるかもだし……」
 伊達工にことごとく攻撃をブロックされ心が折れた旭を見て、私だって頑張れと思った。またコートに帰ってこいと思った。だけど、それは自分にはかけられない言葉だった。
「一度棒に振ったとしてもさ、これまでの努力は無駄じゃない。それこそ、これまでの経験をマネージャーで発揮してくれてるじゃん。日向にだってバレーを教えてあげられた」
「そうかな……」
「そうだよ。上手くいかないことは失敗じゃない。努力したことに意味がないとは思いたくないよ」
 一度挫折した経験を持つ旭は強い。前よりも強くなってバレー部に戻って来た。そんな旭の言うことはやっぱり血が通っている。
 私も、旭みたいになれるだろうか。

「今からやっても遅くないかな……少なくとも、大学からちゃんとプレーできるように」
「うん。すこしずつ準備していけばいいと思うよ。なんなら、部活参加する?」
「いや、それはちょっと」

「だよね」と笑い合っていたところに、西谷に見つかった。
「二人とも隠れてなにやってんですか!」
「ちょっとね。旭って見た目は怖いけど、優しくていい奴だよね~」
「それは褒めてるの……?」

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