第3章 3.再会
すっかり日が暮れる時間となり、私たちはお店を出た。ちなみに、徹が全部奢ってくれた。
「それにしても、女の子たちの声援すごいね。ほんっとにモテるんだね」
「え? そう?」
「徹のあのスマイル、すごいね。みんなを虜にしちゃって」
私は先日の練習試合で見たときの徹の真似をして手を振って見せた。笑顔は若干ひきつってしまった。
「あれは営業スマイルだよー。みんなバレーを応援してくれるから、その感謝の気持ち」
「へぇ……そうなんだ」
「ちょっと、信じてないでしょ?」
私にはちょっと理解しがたい。あんなの、あらぬ誤解を受けそうだから。
「でも響かない人には響かないけどね。それじゃ意味がないんだよなー」
「どういうこと?」と聞き返そうとしたとき、徹の手がふわっと伸びた。
「、髪の毛伸びたね。中学のときはショートだったのに」
徹が私の髪の毛をひと房掬う。私は茹で上がりそうなくらい全身を真っ赤にした。自分でも血が上っているのを自覚するくらいだから、徹にバレているに違いない。
「バ、バレー辞めたから、伸ばそうって思って……」
「へー。可愛い」
「か、可愛…っ!? ちょっとからかわないでよ!」
思わず徹の胸元を叩いた。照れ隠しの必死の抵抗だ。やっぱり徹はケラケラと笑っていた。
「徹は変わったね」
中学の頃の真っすぐでひたむきなお調子者は、格段にレベルアップし、チャラさが際立っていた。バレーも、男としても自信を付けて来たのだろう。
「変わってないよ。何も」
笑顔を絶やさずに、徹は言う。そういうところが変わったんだよ、と思った。何でそんなに笑っているのか、私には少し違和感があった。
「……がケガをしてから、にはバレーの話はタブーだと思って、接し方が分からなかった。それをずっと後悔してたんだよね」
「え……」
「俺たちまた友達に戻れる?」
急に笑顔を止め、徹が首を傾げて聞いた。その期待に満ちた瞳に吸い込まれそうになるのを堪えていた。
私はさっきからずっと徹のペースに飲まれている。
「……もう、友達、だよ……」
「やったね!」
徹はガッツポーズをして喜んでいた。こういう所は中学から変わってないな、お調子者だな、と思わず笑ってしまった。