• テキストサイズ

彩雲の糸

第3章 3.再会


「で、足はどう? さっき校門で走ってたじゃん?」
「うん……リハビリは去年終わった。治ったんだと思うよ」

 私はマネージャーになるまでの経緯を説明した。徹は真剣な表情で聞いてくれた。
「そっか、よかった。バレー、嫌いじゃないくてよかった」
「そうだね……。こないだの練習試合で徹のサーブを見て、羨ましいと思ったから」
「そっか。頑張ってきたから嬉しい。羨ましいなら、だってやればいいのに……」
「…………っ」
 私はスプーンを置いて、下を見た。いろんな葛藤はあったけど、私はマネージャーを選んでよかったと思っていた。
「あ……ごめん。それより、がまたバレーに関わっていてくれたことの方がもちろん嬉しいからね?」
 だけどその反面、やっぱり後悔もあった。徹の成長したサーブを見て、気が付いてしまった。

「足は治っていても、自分がプレーしていることを想像すると息苦しくなる。気持ちの強い人なら、またバレーが出来たんじゃないかな」
 徹は「そんなことない……」と言いかけた。だけど、私がいきなり涙をこぼし、慌ててテーブルにあったペーパーナプキンを差し出してくれた。
「なんで、徹を羨ましいと思っちゃったんだろうね。意味わかんないね」
「はずっと傷ついてたんだね。でもさ――」

 そう言うと、テーブルに置かれた私の手を握った。徹の大きな手のひらから温もりが瞬時に伝わってくる。一瞬、びっくりして飛び上がりそうになったけど、その温もりに溶かされてしまった。
「でもさ、ちゃんとその足で歩いてるじゃん。疲れたなら、また立ち止まったっていい。その度にまた歩けばいいんだよ」
「うん……そう、だね……」
「に与えられた、唯一掴めた糸だったんだよ、マネージャーの道は。このまま頑張って行けば、またその先で見つけられるものがあるかもよ?」
「ありがと。そうだといいな」

/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp