• テキストサイズ

彩雲の糸

第1章 1.夢の終わり


「、部活行くよ」
「ひぐまん、待って、今行く」
 チームメイトの日隈ことひぐまんが教室の外から私に声をかけた。私は急いで教科書やプリントを乱雑にカバンにしまい、走ってひぐまんの元へ向かった。
 私たちは北川第一中学校の女子バレーボール部に所属している。もうすぐ宮城県中学校総合体育大会、いわゆる中総体だ。
 中3最後の年。東北大会に、そして全国大会へ進むべく練習に励んできた。
「、お疲れ!」
「徹! お疲れ!」
 今日は男女のバレー部が体育館を使える日だ。隣のコートは男子バレー部がすでにアップを始めていた。今は体育館内でランニング中だ。今日はこの時期の仙台にしてはやたらと暑く、みんな汗だくなっていた。
「男子たち、張り切ってるね」
「まぁね。俺たちも上を目指してるからね」
 及川徹は同級生。クラスも一緒だし、仲も良い。部活の相談や、進学先の話もするような仲だ。もっとも、徹はイケメンで明るくて、クラスでも人気者だ。私が徹と仲がいいのはバレーボールで繋がっていたからだと思う。
「ストレッチしっかりねー!」
 主将のひぐまんが部員たちに声をかける。女子バレー部もランニングとストレッチを入念に行った。中総体2週間前。こんなときにケガをするわけにはいかないから。

「さん、ちわっす」
「飛雄、お疲れ。ボール拾い?」
「はい」
 彼は影山飛雄。今年入部した1年生だ。私と家が近く、小学校のころからの知り合いだ。
「さん、またサーブ教えてください」
「飛雄はすごく上手じゃん。私に教えられるかなぁ」
「こら、飛雄ちゃん。先輩のことは先輩って呼びなさーい」
 徹が間に割って入って来た。ちょっと不機嫌そうな表情をしている。
「すみません!」
「飛雄は昔からの知り合いだから、そんなの別にいいよ」
 私は慌ててフォローするものの、徹は引かなかった。まぁ、理由は察することが出来るんだけど。
/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp