第3章 ３．再会

　潔子ちゃんも若干、徹とファンの女の子たちに引いていた。私は顔を隠すのもバカらしくなって、視線をコートに戻し、試合に集中し直した。

　3セット目も烏野が優位な中、徹がアップに向かおうとした。その時にようやく徹は私に気が付いた。
「え、！？」
「……久しぶり」
　どういう接し方が良いのか分からず、つい低めの声で接してしまった。
「え？　え？　マネやってんの？」
　徹が目を白黒させている。それだけで注目を集めてしまい、私は女の子たちの視線を感じずにはいられなかった。居心地が悪すぎる。
「うん。去年からやってるよ」
「あ、足は？　治ってないの？」
「こらー！　及川！　さっさとアップ取って来い！！」
「わ！　、また後で！　及川さんのサーブ、見ててよね！？」
　徹は監督に怒られ、慌ててアップをしに行った。

「サーブ、自信、あるんだなぁ」
　いいなぁ。きっとたくさん練習して、もっともっと上手くなったんだな。

（いいなぁ……？）
　なぜか羨んでいる自分に気が付いた。バレーを続けていて、どんどん上手くなっていく徹が羨ましいと思うなんて、なぜだろう。どうかしている。

　ついに烏野のマッチポイント。その時、ようやくアップを終えた徹がピンチサーバーとして現れた。
「いくら攻撃力が高くてもさ、その攻撃まで繋げなきゃ、意味ないんだよ」
　そう言って、月島に狙いを定めて、徹はジャンプサーブを放った。

　その威力にみんなが驚愕する。風圧を感じそうなほどの速さだった。
「うわ、すご……」
あんなの、レシーブしたら腕がもげるかもしれない。私があっけにとられていると、徹は呑気に私にピースしてアピールしてくる。
　女の子たちの目が怖いからやめて、と私は思わず苦笑いした。

　その後もサーブだけで次々と烏野との点差を埋める徹。烏野のレシーブの弱点を狙ってくるところが徹らしい。だけど、どうにかサーブを切り、日向が決めてくれたおかげでギリギリのところで3セット目も取り、烏野が勝利した。
　徹のセットアップを見ることはなかったし、試合に出たのは最後のサーブだけだった。だけど、あの青葉城西に勝つことが出来た。素直にこの勝利は喜んでいいと思う。幸先のよい烏野バレー部の今年度のスタートに小さくガッツポーズをした。