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彩雲の糸

第3章 3.再会


「青城の主将はどんな人?」
「うーん。明るくて、人気者だったよ。でも、自分に正直で子どもっぽいところもあるし、大抵おちゃらけていて、相棒の男の子にいつも怒られてたな」
「ん? なんだそれ」
 菅原くんが首をかげている。たしかに、すごいのか、すごくないのか分からない説明をしてしまった。
「でも、すっごいバレーは上手いよ。かなりの努力家だし。3年経ってどれくらい成長しているのか知らないけど、驚異に違いないよね」

 徹との再会に戦々恐々としていたけど、徹は現れないまま試合開始となった。肩透かしを食らった。今日は休みなのだろうか。
 意外と言ってはなんだけど、1セット目は落としたものの、飛雄と日向のコンビを前に青城が翻弄されていた。さっきまで行きのバスの中で吐いたり、珍プレーを連発していた日向がようやく機能していた。飛雄の頭に思いっきりサーブをぶつけたことで、緊張が解けて目が覚めたようだ。
 潔子ちゃんはスコアを。私は試合の記録をノートに取る。
「さっき北川第一の出身者たちに挨拶されてたね」
「あ、岩ちゃんたちね。私のこと覚えていてくれてたみたい」
 潔子ちゃんはいつも表情を表にあまり出さないものの、あの青葉城西から1セット取り返したことは嬉しそうに見えた。
しかし、徹はどうしたんだろう……と思ったところで「きゃーっ」と、試合を観に来ていた青城の女の子たちの黄色い声が聞こえた。

 見なくても分かる。オーラで分かる。
 ――あれは徹だ。

「やっほう。飛雄ちゃん、久しぶり。育ったね」
 徹が爽やかスマイルで飛雄に手を振る。飛雄はやや気まずそうに挨拶をしていた。私はとっさに髪の毛で顔を隠し、下を向いた。

 徹はもともと高かった背が更に伸びているし、身体だって鍛えているのも分かる。顔つきだって昔より大人びていた。
(昔よりもかっこ良くなったなと思ったけど……、ちょっとだけドキドキしたけど……)
 それよりも、女の子の盛大な声援がやたら鼻についた。持ってくれたペンに力が入る。
「なんだろうね、あれ……」
「ね。でもちゃん、知り合いでしょ?」
「あれは私の知らない及川徹だ」
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