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彩雲の糸

第3章 3.再会


「足、治らないんですか?」
 飛雄は私の膝のあたりを見た。だけどもう、遠目で見る分にはケガをしていたことなんて分からないくらいには回復していた。
「どうだろう。たぶん治ってるんじゃないかな」
「……そうですか」
 見た目的には治ってるけど、バレーが出来なきゃ意味がない。どこか他人事は態度をとるこんな自分はやっぱり嫌いだ。

 飛雄とは小学校が同じというのもあり、家がそこそこ近所だ。その割には、ケガをしてからはタイミングが合わず飛雄とは道端でばったり会うことはなかった。
 私の家の近くのT字路。お互いの家の分岐点だ。「またね」と挨拶をした。
「さん」
「ん?」
「俺、中学ではいろいろ失敗して、白鳥沢からは推薦が貰えなくて」
 飛雄は表情を変えずに真顔で言った。昔から彼は感情が読み取りにくい。
「そうだったんだ……」
「でも、やるからには頑張ります。よろしくお願いします」
「うん、よろしくね」

 さっき澤村から聞いた。飛雄の中総体のときの様子を。独善的なプレーをして、周りが誰も付いて来なかったということを。
 彼も彼なりに傷ついただろうし、反省し、今こうして前を向いている。
「……頑張れ。君はまだやり直せる」
 飛雄の背中を見送りながら、私はポツリと言葉を漏らした。彼も、いろいろ傷ついたけど、再起しようと頑張っているのだから。


 無事に飛雄たちが入部し、翌週の火曜日。その日はやって来た。
 青葉城西との練習試合。徹と再会をすることになる。卒業以来、一度も連絡を取っていないし、昨年は試合をすることもなかったので、これまで徹と会うことはなかった。
「って青城の主将とも知り合いなんだっけ」
「うん、中学では同じクラスだったんだよね」
 澤村と菅原が黙って私の荷物を持ってくれた。さりげない優しさが素敵だなと思った。
「ありがと!」とお礼を言う。大した荷物を持たないマネージャーはなかなか格好がつかないけど、その優しさに甘えることにした。
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