第1章 Ⅰ*エルヴィン・スミス
エルヴィンの進退が決まれば、次はの番だ。
「は仕事を辞められるか?」
『辞めたほうが良いの?』
「続けたいなら辞めなくてもかまわないが…私の秘書はどうだろうか?」
『私に務まるかな…』
職種は激しく違えど、あの調査兵団の団長補佐としてエルヴィンとハンジを支え続けたなら問題はなかった。
むしろ普通の会社員に落ち着かせておくには、どう見積もっても勿体無い人材で在ることは明白だ。
「エルヴィン、ヘッドハンティングだよ!」
「私が交渉をしよう」
『え…、普通の会社員だよ…私』
「エルヴィンの後は私の事も支えてくれたじゃないか…。の会社の人事は目が曇ってるのかい?」
一部始終を黙って見ていたリヴァイが口を開いた。
「落ち着け…。今日はもう遅い。は明日も仕事だろう。ハンジ送ってやれ」
「そうだね、送るよ」
『ありがとう、そうさせてもらうね』
再会もプロポーズも嬉しかった。
一夜の夢は覚めないしシンデレラにもならなかったけれど、残念ながら日常はやってくるのだ。
「待ってくれ!」
「待たねぇ、今日は我慢しろエルヴィン」
エルヴィンはこの世の終わりのような悲痛な表情で、見送った。