第1章 Ⅰ*エルヴィン・スミス
エルヴィンはスマホを取り出すと、誰かに通話をかけた。
「ハンジ、リヴァイと一緒か?控室まで来てくれ」
扉は3秒で開いて、リヴァイとハンジが部屋に入ってくる。
2人が気がかりでどこにも行く気にはなれず、扉の前で待機していたようだった。
「明日、婚姻届を出そうと思う」
『え!?』
あまりにも唐突な事に、が驚くとエルヴィンも驚いていた。
心配そうに顔を覗き「嫌なのか…」と言われれば、慌てて顔を横に振った。
「ハンジ、俺は引退をする」
『え!?』
「うん、良いと思うよ。目的も果たせたし」
とにかく有名になりに探し出してもらうためだけに、子供の頃から爆進し続けていた。
エルヴィンにしては安直な算段であっても、この広い世界で他に方法がなかった。
「これで…クソ甘ったりぃ歌から離れられる……」
ノーネームという謎の覆面バンドのボーカルはリヴァイだ。
カルト的な人気を誇るバンドに、世界的に有名なピアニストであるエルヴィンが楽曲提供をする。
ノーネームらしからぬ甘いラブソングは、大衆受けも相まって成功をおさめた。
ただ1人、ラブソングを歌わされるはめになったリヴァイを除いては…。
「売れたから良いじゃないか。私達お金もちだよ?」
「金には困らねぇが…」
「だろう?」
これら全ては、を見つけるための博打だった。
「そう言えば、はSNSはやってないのかい?」
『やってるよ?』
「 で何年探したことか…」
『あ…両親が離婚して なの』
それは見つからない訳だ…と今まで探し続けた3人は額を抑えた。
「で、だ、これからどうするんだ」
「できれば仕事も辞め…」
「それは却下だ、エルヴィン!」
「私も反対だよ、エルヴィン!」
「冗談は寝てから言いやがれ」
リヴァイとハンジの反対により、エルヴィンは仕事は続け表舞台からは幕を引く形で収まった。