第1章 君と俺の好きな人(赤葦)
人に呼ばれた…?それなら昼前に連絡くれればよかったのに。
何となく胸の中がざわついた。嫌な予感、っていうのかなコレ。
「そっか、ありがとう。」
教えてくれた女子生徒に簡単に頭下げ足早に教室を出た。連絡送る余裕も無いくらい急ぎの用事だった?…いや、そのへんキッチリしてる子だしな。…俺に言えない内容だった?そういえば、朝下駄箱で持ってたアレは?
もし俺が想像しているものなら多分、の居る所は……ベタだけど体育館裏、とか?
走ってそこに向かうと探していた彼女はあっさりと見つかった。そしてその目の前には俺の知らない男。
ああ、やっぱり。そういう事か。
これは声を掛けていいものなのか分からなくて、とりあえず身を潜めた。何となく話し声が聞こえてくる。
「木兎から君の話を聞いて…君を見つけてからずっと気になってたんだ。ちゃんは俺のことなんて知らないだろうけど、コレから知ってってくれればいいから。俺と付き合ってくれないかな。」
「い…いや……私は…。」
「いきなり変なことはしないし、君の事ちゃんと大事にするから。ね?」
「いやー…そういうこと、では…無くてですね…。」
…なんで断らないんだよ。喜んでるの?
無性に、イライラした。自分らしくも無い。
「1回だけでいいから、俺とデートしてよ。それでダメなら諦めるからさ。」
「本当ですか…?」
ちょっと。なんでOK出そうとしてるのは。男の手が彼女へと伸る。気付いた時には、俺は咄嗟に物陰から飛び出て、を抱きしめようと伸ばされた手を叩いていた。ポカンとする男と、同じような顔した。…面倒な事してしまった。
「……すみません、先に予約してたの俺なんで。この子は返してもらいますね。」
「あっ…あああ赤葦先輩!」
「待てよ!俺はまだ話の途中だ。」
「いきなり抱きしめようとしてた人がよく、何もしないなんて言えましたね。行くよ。」
「はい!赤葦先輩!」
「ちょっと…ちゃん!」
「ごめんなさい!私、貴方の気持ちには応えられないです。好きな人がいるので!」
「……クソッ、押し切れると思ったのに!」
そんな事だろうと思った。
にこにこと嬉しそうに笑うの手を掴みそのままバレー部の部室へと向かう。