第1章 君と俺の好きな人(赤葦)
「…いいよ、教室行くから待ってて。」
「ホントですか!?断られると思った!」
「君の事嫌いじゃないから。誘われて断る理由はないよ。」
「えっ!?あ…そ、そうですか…。」
急に俯き気味になった。髪の隙間から見える耳が少し赤くなっていた。普段物凄い勢いで押してくるのに、俺から押すと急に照れる所が、可愛くて面白い。下駄箱に到達すると、流石に1年と2年では距離がある。時間も時間だし、俺も早く教室行かないと。
「それじゃあ、また後で。」
「あ……はい、また後で!」
未だ俯いていたに声だけ掛け、教室に向かう。というか今、何か持ってた?よく見えなかったけど。…まぁいいか。
そう思いながら廊下を歩いていると不意に後ろから肩を組まれた。同じクラスの友達だ。
「オイオイ赤葦、お前彼女居たのかよ?女なんて興味ないってツラしてるくせに!!」
「彼女じゃないよ。部活の後輩。」
「お前の部活マネ3人居るじゃん。あの子だけ特別~?」
「…どうだろうね。」
「スカしちゃってー。あの子結構モテるし、狙ってるなら、うかうかしてると盗られちまうぜ?」
「なんであの子がモテる事知ってるんだよ。」
「え、だって名前結構聞くだろ?まー兄貴が居るから余計ってのもあるのかもなー。妹の自慢しまくってるらしいし。サッカー部の先輩が言ってたよ。」
「全くあの人は…!」
自慢してどうする。可愛いと思うなら、心配もするでしょうに。いや、木兎さんにそこまで求めるのが間違ってるのか…?
後ろの席の友達に吹き込まれた内容が妙に気になって悶々とした気持ちを抱えているといつの間にか午前の授業は終えた。約束していた昼休み。
弁当を持ってのクラスに向かう。教室を覗いてみると、テラスや中庭、食堂を利用してる生徒の方が多いのか教室にはほとんど人が居なかった。
「…?」
それなのに、彼女は見当たらない。何時もなら直ぐに駆け寄ってくるのに。ポケットから携帯を取り出し、連絡ツールで"どこにいるの?"とだけ送ってみた。
「あ。もしかして赤葦先輩ですか?」
「…?そうだけど。」
「から伝言なんですけど、人に呼ばれたから、後で教室行きますって。」