第1章 君と俺の好きな人(赤葦)
「赤葦先輩!」
「…おはよう。相変わらず朝から元気だね。というか、なんで俺の家知ってるの?」
「この前尾行しました!」
「それストーカーって言うんだけど自覚ある?」
「あはは、無いですね!」
満面の笑顔で答えるや否や隣に並んで歩き始めた彼女はバレー部マネージャーであり俺の後輩であり木兎さんの妹、。今年入学したての一年生だけど、入学前から試合がある度来てくれていたし何度か面識はあった。そしていつの間にか何故か物凄い懐かれてしまって、今日もこの様だ。…なんで俺なんだろう。
「今日はちょっと冷えますねー、早く暖かくならないかな。」
「もうすぐ6月になるし、暖かくなると思うよ。寒いなら走れば?」
「嫌ですよ!何のために赤葦先輩の家の前で待ってたと思ってるんですか!!」
「知らないよ…。」
「赤葦先輩と登校する為ですよ!」
「待ってたというより、待ち伏せてたの間違いじゃない?」
「待ってたって言わせて下さいよー。」
付き合ってる訳では無い。告白もされていないし。…だからといってその気が無い、ってワケじゃないけれど。
ぴったりとくっついて来る。触れる箇所だけ暖かい。
「…あんまりくっついてるとまた木兎さんに怒られるよ。」
「あったかいからいいじゃないですかー。」
「木兎さんにくっ付いたら?喜ぶよ、あの人。」
「ブラコンじゃあるまいし…。」
「大丈夫、あの人はシスコンだから。」
「いや、というか私赤葦先輩だからくっつきたいんですけど。」
「…本当に女の子?って位恥ずかしい事キッパリ言うね、は。」
こっちが寧ろ照れる。
学校に着くと予想通り騒ぐ木兎さんをいなしつつ、いつも通りの朝練が始まる。こころなしか木兎さんのアタックに気合い篭ってる気がするな。そんなに俺がと登校するのは嫌ですか…。
結局そのまま時間は過ぎ、キツイ朝練の時間は終えた。先に行ってていい、って言ってるのに相変わらず律儀に俺が着替え終わるのを待っていたを連れて下駄箱へ向かう。
「赤葦先輩、今日お昼ご飯一緒に食べましょうよー。」