第5章 夏休み
祭り当日ーー
お祭りは夕方からだけど、この日ばかりは朝から忙しく動き回っていた
午前中からキッチンに立ち、お婆ちゃんと大量のお稲荷さんと太巻きを作っていく
お米を数回に分けて炊くからそれなりに時間がかかり気付けば昼近くになっていた
ようやく作り終えたところで休む間もなく役員さん達の元へ差し入れに行きーーーーー
ようやくひと段落したところでお婆ちゃんと遅めの昼食、お稲荷さんを口にできた。
『おいしいっ、、、‼︎』
じゅわ、と口の中で染み込んだ汁が溢れる
「そうかい?良かったよ、ほらまだあるからね。」
『うん。』
口いっぱいに頬張る私を見てお婆ちゃんは嬉しそうに笑っている
ーーー信ちゃんにも食べさせてあげたかったな。と箸を伸ばしながらつい考えてしまう
チラッと壁に掛かった時計に目を向けると15時を過ぎたところだった
ーーーー信ちゃん、何時くらいに帰って来るのかな…。
普段は携帯を持たない事に不便を感じないけど、こんな時は携帯があれば…と思ってしまう。
きっと帰りは夜、だよね。
帰って来たとしてもわざわざうちに顔なんか出さないだろうし…。
ーーーーー会いたいなぁ。
そんな台詞口が裂けても言えないし、そんな柄じゃないのは自分が1番分かってる
メガネをずり上げ、また一つ稲荷をお代わりする
信ちゃんの事は好きだけど、恋愛で悩む自分は何だからしくない気がして……
行き場のない寂しさを誤魔化すように箸を進めた