第5章 夏休み
甘いものは好き
和菓子も洋菓子も
勉強の合間や疲れた時に食べると糖分に満たされてまた頑張ろうと思えるから
羊羹を食べ終わったところで「そう言えば」とお婆ちゃんが口を開いた
「北さんとこ、今年は町内会の役員だからお祭りの準備で朝から忙しそうだったよ。明日は何か差し入れ作っていこうかねぇ」
『そっかぁ、お祭りいよいよ明日だもんね。私も何か手伝うよ』
「そうかい?じゃあお稲荷さんでも作ろうか?」
『うん!お婆ちゃんのお稲荷さん楽しみ♪』
お婆ちゃんの手料理はどれも美味しいけど、前日から油揚げに味を染み込ませて作るお稲荷さんは絶品だ
ゴクリと口の中に溜まった唾液を飲み込む
「は信ちゃんとお祭り行くんでしょ?」
『・・・・信ちゃん今、合宿中だから…。』
さっきまで浮いていた心が一気に萎んでいく
私の小さくなっていく声にお婆ちゃんは何か感じとったのか、
「そう、残念だけど信ちゃんいないんじゃがお稲荷さんいっぱい食べてね。」
そう言ってにっこりと笑った
『・・・うん。』
夏休みに入ったとはいえ、信ちゃんとはまともに会えてない
期末テストが終わってすぐ、バレー部は夏のインターハイにむけて猛練習からの合宿である
それでも合宿に行く前日の夜、少しだけでもと思い部活帰りの信ちゃんを家の前で待ち伏せした
「お祭り一緒に行ける?」
その一言が聞きたくて。