第5章 夏休み
ずっと黙ったまま先を歩く治君がやっと足を止めてくれたのは
『ハァハァ、ハァ、、、』
校門を出た後だった
陽は傾いてるとはいえまだ外は暑く汗が噴き出す
「あ、悪い…。無理矢理連れ出してもうて。」
『ハァ、ハァ、、、う、うん、、だい、、ハァ、、』
ようやく解放された手を膝に当て肩で息をする
「フッ、息切れヤバいな?俺が言う事やないけど(笑)」
『ハァ、ハァ、、、そう、、だね、、もう少しペース、、、考えてくれると、、、助かります、、』
少しずつ息が整ってきたところで顔を上げると、治君の表情はいつもの顔つきに戻っていた
ーーーー良かった。
内心ホッとしつつ、次からは巻き込まれないよう早めに退散しようと心に決める
『あ、鞄…ありがとう』
「ん?あぁ、えーよ。このままバス停まで持っとく」
『そんな、重いし悪いよ、、、』
ずっと持ってもらうのはさすがに申し訳なくて、
治君の手から鞄を取ろうと腕を伸ばした
『ーーーあ、』
伸ばした手が治君の手に触れてしまい反射的に引っ込める
わざとじゃないけど治君にまた嫌な思いをさせてしまったと思いすぐに謝った
『ごっ、ごめんなさい、、、』
「え?何⁇・・・何で謝るん?」
不機嫌になるかも…とドキドキしたけれど、治君はキョトンとした顔でこちらを見ている
ーーーーあ、あれ?セーフ、、、⁇
『だって、、、治君…触られるのダメ、なんでしょ⁇』
恐る恐る聞いてみると、治君は少し考える素ぶりを見せ、
「人によるけどなら平気。そもそもここまで腕引っ張って来たの俺やで?」
今度は私の手をギュッと握って見せると悪戯っぽい笑みを浮かべた
おぉ……こうやって女子を堕としていくのか。
反則級の顔と仕草に感心していると、治君はじっ…と観察するように私を見つめてきた
「・・・なぁ。この手が北さんやったらはドキドキしたり顔赤くしたりするん?」
突然何を言い出すのかと口を開きかけたけれど、治君の顔があまりに真剣で…
口を閉じた。
握られた手から治君の熱が伝わってきて
この熱が何なのか、この時はまだ分からなかった