第13章 2回目の夏
「それと今日の、いつもに増して可愛えな?ポニーテール、めっちゃ似合っとる。俺その髪型好きやねん。」
屈託のない笑顔でサラリとそんな台詞を言うもんだから膨れた頬は一瞬で赤くなる
いつもは大抵おろすか低い位置で一つに結ぶ髪を今日は珍しく高い位置で結いてみた
らしくないかも、と最初は少しソワソワしてたけど、こうしてお世辞でも褒められるとやっぱり嬉しい……。
『き、今日は暑いかなと思って……結んでみました……』
「ええやん、めっちゃ可愛い。」
赤くなった顔を誤魔化すようにヘラで焼きそばを炒めていると、治君の長い指がポニーテールの毛先をスーッと梳いた
『っ、、』
肩がビクッとと跳ね、勢いよく振り向くと思いの外至近距離に治君の顔がありーーー
しっとりと濡れた銀色の髪、前髪の間から覗く垂れ気味の目、通った鼻筋……その均整のとれた顔立ちがいつも以上に艶っぽく見えて心臓が早鐘を打つ
「あー…すまん、あまりに綺麗やったからつい……」
『まっ、またそんな事言って、、、』
私の顔も赤いと思うけど、眉を下げて笑う治君のこめかみあたりもほんのり赤くて……
ーーーー何か、、、心臓がうるさい………
ドキドキと鳴る心臓に戸惑っていると、治君はそっと私の手からヘラを抜き取った。
「・・・でも正直可愛くなり過ぎんのも嫌なもんやな……の可愛いさとか良いトコは俺だけが知ってたかったのに…。
今はちょっと複雑な心境や。」
『え・・・?』
「ーーーいや、何でもないわ。
って、日焼けしたんとちゃう?顔赤いで?」
『いや…これはーー、、、』
日焼けじゃない…とは言えなくて口籠ると、治君はフッと笑みを溢し首を傾けた。
「そんな心配せんでも焼きそばぐらい作れるで?ほら黒沢達のとこて座って待っとき?」
『・・・・・うん、じゃあお願いします…』
はいはい任せとき〜と豪快なヘラ捌きを見せる治君。
焼きそばの心配はしてないんだけどなぁ…
と思いつつも、火照る頬を冷ましたくて言葉に甘える事にした。