第13章 2回目の夏
陽が西へと傾き、カーテンの隙間から夕陽が差し込む時間になると生徒は1人、また1人、と図書室を出て行く
下校時間が近づき生徒の数もまばらになった頃ーーーー
それまで集中して課題に取り組んでいた治君が「うーーん。」と腕を伸ばした。
『少し休憩する?て言ってももうすぐ下校時間だけど…。』
「もうそんな時間なん?どーりで疲れる訳や…。てか最初っから休憩しかしとらんヤツもおるけど。」
治君は小さな消しゴムの破片を拾うと未だ突っ伏したままの宮侑の頭に向かって投げて遊び始めた。
熟睡してるのか金色の頭はピクリとも動かない。
「夏休み入ったらバレー部はすぐにインターハイやね?」
「せやな。けどその前に地獄の合宿やぁ…。今年は北さんが主将やから去年よりキツいやろうなぁ…。」
遠い目をしながら銀島がそう呟くと治君と角名君の顔があからさまに曇っていく
信ちゃん、練習以外の生活面でも厳しいみたいだし24時間一緒、っていうのは後輩からしてみたら気が重いのかもな……
合宿かぁ…あれから1年。
去年は合宿帰りの信ちゃんと一緒にお祭りに行ったっけ
楽しかったなぁ〜……。
今思えば少し切なくなるけど、去年の夏休み唯一の思い出だ。
懐かしく物思いに耽っていると、
「せや、は夏休み何してるん?」
『え?夏休みはー、、特に何も…。お婆ちゃんの手伝いとか図書館に通ったりするぐらい、かな』
周りは皆んな部活やバイトで忙しいのに、何だか私だけ何も予定がないのは恥ずかしくて、少し肩身が狭い
「ほなどっか遊び行こうや!2人でーー」
「っ‼︎‼︎それええなっ⁈⁈夏やし思い出作ろ‼︎」
突然スイッチが入ったように宮侑がガバッと顔を上げここぞとばかりに声を張り上げた