第10章 2回目の春
「ってこんな話しまで付き合わせてもうてごめんな?もう帰るやろ?途中まで一緒に帰ってもええ?」
『もちろん。私はバスだけど…黒沢さんは?』
「私はーーー」
「‼︎」
突然名前を呼ばれキョロキョロと周りを見渡すと、体育館の窓から治君が顔を覗かせ手を振っていた
『・・・治君⁇』
「やっぱりやったんやな。さっきと似とる後ろ姿が見えたからもしかして、と思って。てか紅白戦観に来てくれたん⁇」
『うん、野崎さんが教えてくれて。
えっとー、、、黒沢さん、ちょっと話して来てもいい…かな?』
「もっ、も、勿論‼︎ごゆっくり‼︎」
私と治君を交互に見比べながら何故か興奮気味の黒沢さんに断りを入れ、窓へと駆け寄る。
『治君、取材されたんでしょ?バレーの雑誌だって聞いたけどそれってーーー』
「ふっふ〜ん。せやねん、月刊バレーボール。あん時のやつやで?」
『わぁ…やっぱり‼︎こんなに早く有言実行するなんて凄い‼︎』
「いやぁ〜、あんま褒めんといて?に褒められたら調子乗ってまうやん。」
そうは言いつつも治君はご機嫌な様子でフフン♪と鼻を鳴らしている
『だって本当に凄いと思うから。紅白戦も終始鳥肌ものだったし。
治君のスパイク、カッコ良かったよ!』
「っ//」
目を見開き固まる治君を見て、ハッとなる
『あ、ごめんね…何も知らない素人のくせに。バレーボールちゃんと観たの初めてで、何かちょっと興奮気味で…。』
ハハ、と苦笑いを浮かべると、治君は頭を掻きながら照れくさそうにはにかんだ。
「・・・いや、ちゃうねん。にカッコ良いって言われて普通に照れてもうただけやから…」
『え…?』
「てかちょっとだけ待っててくれへん?今日はこれで練習終わりやから一緒に帰ろ?」
『あ、、でもーーー』
友達がいるから、と言うより早く治君は踵を返すとダッシュで行ってしまった