第10章 2回目の春
『ふぅ…』
体育館脇の水道にもたれ掛かり短く息を吐く
ーーー逃げるように出てきちゃったな……。
置いてきてしまった黒沢さんが気になりつつも、まぁ大丈夫だろうとポケットから携帯を取り出す
あ、野崎さんからメールきてた
画面を開き確認すると
"練習抜け出して見に行こう思ってたんやけど無理そう!ごめん‼︎"
野崎さん、今年確か女バレの副キャプテンって言ってたよね…
練習サボって観に来ようとしてたんだ…
でもそこがまた野崎さんらしいけど(笑)
"大丈夫です。紅白戦観ましたよ、面白かったです‼︎"
本当はもっと色々書きたい事はあるし、この熱を伝えたいところだけどそれはまた今度会った時に話そう。
短く返事を打ち終わったところで黒沢さんが体育館の方から走って出て来た
「さーん良かった〜!まだ居った〜‼︎」
『あ、黒沢さん。もういいの?』
体育館の方を指差すと、黒沢さんはポッと頬を染めながらコクコクと頷いた
「目に焼き付けてきたし!それにな、最後出て来る時目が合うたんやけど…銀島君、ちょっと笑ってくれた気がすんねん‼︎」
キャー!と手で顔を隠して悶える姿が何とも微笑ましくて、私まで嬉しくなってくる
『目が合って笑いかけてくれるなんて優しい人なんだね、銀島君。』
「せやねん!あんまり感情豊かなタイプちゃうけど、おおらかで優しい人なんよ?」
ニコニコと話す黒沢さん、可愛いなぁ。まさに恋する乙女って感じ。
それにしても………
目が合っただけで嫌悪感丸出しの顔をする宮侑とは大違いだな、と心の中で毒付く。
って、私も人の事言えないか、、、。