第9章 初恋のおわり
あー…やばい、、、
涙腺が緩んでいるのか、信ちゃんからもらったマスコットを見ただけで涙が込み上げてくる
ポタ、ポタッと鞄に染みが出来、慌てて袖口で頬を拭うと、目の前に綺麗に畳まれたハンカチが差し出された
「良かったら使うて?」
『ーーー…。』
淡い黄色のハンカチを見ながらふと思う
明るくて美人でスタイルも性格も良いこの人はきっと失恋の経験なんかきっとないんだろうな…
人気者でいつも人に囲まれて。
きっとフラれた側の、私の気持ちなんて分かりっこない。
『・・・・大丈夫です…』
差し出されたハンカチを受け取らなかったのは私なりの小さな反抗、
私に無いものを全て持っている野崎さんへの"僻み"
認めたくないけど、、、
この人と信ちゃんはやっぱりお似合いだと思う。
そんな人と一緒にいると余計自分が惨めに思えて卑屈な事ばかりが思い浮かんでしまう。
だから普段なら絶対言わないような言葉が口から溢れた
『・・・・邪魔が減って安心したんじゃないですか?』
隣から息を飲む音が聞こえたと同時、すぐに後悔が襲う
今のは言い過ぎ、、、、
片手て口を覆うけどもう遅い。
とにかくこの場から逃げ出したくて鞄を抱えて立ち上がった
『ご、、ごめんなさい、、、、私戻りますっ、、』
野崎さんの顔を見るのも怖くて、くるりと背を向けた時ーーー
「私はとっくにフラれとるから。」
いつものハキハキした声とは違い弱々しい声が背中から聞こえた
『・・・・え?』
耳を疑うセリフに、足を止め振り向くと野崎さんは寂しそうに笑っていた
「うちら失恋同盟やね。」