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鬼が人の心を宿す時【鬼滅の刃】*短編集(ほぼ鬼)

第2章 The Light in the Abyssー前編【猗窩座】




仕上がりも、また圧巻で
まるで、俺の内側から湧き上がって生み出されるものを表現したものだった。


そこに映るのは、これまでの俺ではない。彼女の作品によって、生まれ変わった、新しい俺だった。

「……これが、『再生』か」

そう呟くと同時に、胸につかえていた最後のようなものが涙となって一筋流れる。

彼女は、何も言わずに、俺の肩にそっと手を置いた。その温かい手が、俺の全てを受け止めてくれるように感じた。


今日のこの空の色はセルリアンブルーというらしい。
撮影は彼女の命を懸けた作品から引き出された俺自身の感情や思いを全て載せて、最高の仕上がりとなる。

スタッフも口をそろえて俺たち二人の代表作になるだろうと唸ったほどだった。



予定した撮影が全て終わり、全員が撤収作業に入る。


仕事の達成感よりも、深い解放感と清々しさが淀んでいた心を久しぶりに照らしているようで体にも軽さを感じていた。

化粧を落としている間に、ちらりと彼女の方を見ると道具を手際よく片付けている様子が目に入る。

どこか達成感のようなものに満ちていて、最初に会った頃の無機質な感じがないように感じた。


あまりに彼女を見過ぎていたのか、作業していた手を止めて顔を上げる。

戸惑ったような表情で一度目を伏せたが、もう一度こちらをみた。

その眼差しはどこか柔らかで、彼女の方も何かしらの変化があったのではないかと確信する。

言葉はない。
だけど、堪らなく心地よい。

衝動が襲う
もっと深くあの魂の会話のようなものに一緒に浸っていたい。


この日、俺の心の中で、彼女への感情は、仕事の枠を完全に超え、確かなものへと変わっていった。






再び、彼女を乗せて車を走らせる。

車内の沈黙は、もはや居心地の悪いものではなかった。
言葉にはできない深い信頼と
穏やかな空気が占拠する。





しばらくして、彼女が口を開いた。

「…今回の仕事、本当にありがとうございました。猗窩座さんのおかげで、わたしも最高の作品を創ることができました」

ハンドルを握る手に少しだけ力が入る。
耳に入ってくる言葉が、胸の中にある溢れさせる。
それを凝縮して今の彼女に送るに相応しい言葉を贈りたい思った。

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