第5章 拉致と監禁
この日は、メイドのシェリーと共に町へと来ていた。今回は、お貴族様なら必須の刺繍の為の材料を購入に来たのだ。旦那様は町に行くことを渋ったけれど、付き添いがいるならと許可してくれた。
お店の中は人がそう多くなくて、暫く色々と眺めていたのだけど。お店の従業員である若い男性が、奥にもあるからと案内された結果、奥で控えていたあまりよくない男たちに拉致られる羽目となった。
メイドには乱暴をするなと言ったのだけど、男どもは容赦なく殴って気絶させてしまった。そして、誰が一番に楽しむかニヤニヤしながら別室へとメイドを連れて行ってしまった。
泣き叫ぶ私を店の従業員から託された男は、私を裏側から連れ出し馬車へと押し込めた。向かった先は、ある平凡な家。
そして、そこで待ち構えていたのは元婚約者だった。
「久しぶりだな、スミレ。俺を無視した報い、受けて貰う。」
「ソウイチが終わった後なら、俺も楽しんでいいんだよな?」
「あぁ、構わない。先ずは、俺からだ。明日には呼んでやるから待ってろ。」
下衆な笑みを張り付けたまま部屋から出て行った男。
「お前は身体だけは極上だったからな。大人しく俺のセフレでいればいい思いさせてやったものを。」
縄で縛られて自由に動き回れない。
「どいつもこいつも俺を無碍にしやがって。そもそも、お前が俺を受け入れなかったのが悪いんだ。俺に抱き潰されて、離婚されろ。楽しみだなぁ、あのいけ好かない男の苦渋に満ちた顔を見るのは。あぁ、大人しくしていろよ?必要ないその服、このナイフで切り裂いてやるからな。その後は「馬鹿だ馬鹿だとは思っていましたが、救いようのない大馬鹿者でしたね。」」
いきなり現れた人型の何かが、鮮明に見えた時私は安堵した。が、直ぐにメイドのシェリーのことを言えば大丈夫だと言ってくれた。
私の元に近付いた旦那様が、私の自由を奪っていた縄を解いてくれた。
「少し目を閉じて耳を塞いでいてくれ。いいかい?私がいいと言うまで目を開けない様に。」
頷くと目を閉じ耳を塞いだ。現実ならそれくらいで音が聞こえなくなる訳はない。きっと、旦那様の魔法なのだろう。
遠くで鈍い何かがぶつかる音が聞こえてきたけれど、私は言われるがまま大人しくしていた。どれくらい時間が過ぎただろう?