第6章 逢瀬その6
そんな二人を見ている人はいなかった。
美智は半分酔っぱらっていたので今何が起きたのか理解できないでいた。
それくらいに一瞬の出来事だったのだ。
美智はキスされても別に嫌だとは思っていなかった。
中嶋のことを嫌いではなかったからだ。
どちらかと言えば、好きな方に入っていた。
中嶋はトイレから戻ると何事もなかったかのように席に座った。
店の時計を見ると10時半に近かった。
「もうそろそろ帰ろうか?」
「そうですね」
店を出ると涼しい風が吹いていてちょっと肌寒かった。
今日、美智はノースリーブの黒のミニワンピにカーディガンを羽織っていた。
「今日は、ご馳走様でした」
「いや、俺も楽しかったよ。だいぶ酔ってるようだけど大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。タクシー拾って帰ります…」
とは、言ったものの美智はかなり酔っぱらっていた。
美智はタクシーを拾おうとフラフラとしながら通りに出た。
中嶋はそれを見ると心配になり美智の身体を支えるようにして肩を抱きしめてきた。
肩を抱きしめると美智にキスしてきたのだ。
そのキスは舌を思い切り絡ませてくるキスだった。
美智はそのキスで感じてしまい足元から崩れてしまった。
その身体を中嶋は支えていた。
そして、タクシーを捕まえると二人はそのタクシーに乗り込んだ。