第5章 逢瀬その5
「さ、飲みましょう」
「そうだな」
二人はそう言うと飲み始めた。
美智の作るおつまみは、アサリの酒蒸しやもろキュウ、ねぎま、水餃子などであった。
酒好きの美智が作るらしいおつまみだ。
二人は善に来るお客さんの話しで盛り上がった。
「あの、斉藤さんて人、本当に失礼な人よね?」
「確かに、言葉が乱暴だよ」
この斉藤という常連客はちょっと癖の強い人であった。
お店のスタッフからもある意味、嫌われていたのだ。
「でも、斉藤さんは羽振りはいいわ。私も何度かおごってもらってるし」
「そうなんだ。それは花柳さんだからじゃないか?」
「そうかな?」
「そうだよ。斉藤さんは若い子が好きだから…」
そう話すと二人は笑ったのだ。
美智はとても楽しいと感じていた。
思い切り美智は笑っていたのだ。
こんな風に笑ったのはいつ以来だろう…と、思っていたのである。
二人は酔っぱらっていた。
それも気持ちよく酔っぱらっていた。
二人は少しじゃれ合っていたのだ。
美智は誰彼構わずハグするのが好きであった。
この日も酔った勢いでソファーの隣に座っている大宮にハグしたのだ。
大宮はそのハグでちょっと驚いていた。