第5章 逢瀬その5
「じゃ、行こうか?」
「そうだな」
二人はそう話すと美智のマンションに向かって歩き始めた。
本当にマンションまで歩いて5分くらいだった。
美智の部屋は303号室だ。
その扉を開け、大宮を家に迎い入れた。
誰にも見られることはなかった。
美智はご近所に知られないように大宮を家に入れたのだ。
部屋に入ると美智がかけたのか音楽が流れていた。
その音色は心を癒してくれるものであった。
大宮は美智の自宅のリビングのソファーに腰かけていた。
少し、落ち着きなさそうにしている。
「たけちゃん、緊張してる?」
美智は少し意地悪そうにそう聞いた。
「え、だって花柳さんは結婚してるんだろ?旦那がいるじゃん。いつ帰ってくるかわからないよ」
「大丈夫よ。今週も出張でいないから…」
「そ、そうか?」
大宮はちょっとドキドキしていた。
いつ夫の龍一と出くわすか分からなかったからである。
美智は意外と冷静だった。
もうこんな生活が長く続いていたからだろうか。
予想に反して龍一が帰ってくるとは思えなかったのだ。