第5章 逢瀬その5
「そうなんだ…」
大宮はそう言うと黙ってしまった。
マスターの息子の徳村が美智に話しかけてきた。
「花柳さん、そろそろボトル出しましょうか?」
「はい、お願いします」
そう話すと徳村はボトルとアイスとお茶を用意してカウンターに持ってきてくれた。
「今日も、ゆっくりしていってくださいね」
「うん、ありがとう」
美智は徳村と話ができて嬉しさを隠しきれなかった。
徳村は店に来る女性客の憧れの存在だったのだ。
年齢はまだ30歳になったばかりだった。
とても清潔感があり爽やかな感じのする人である。
美智は自分で焼酎の水割りを作っていた。
それを、隣に座っている大宮が見ていた。
大宮の年齢は美智と同じくらいである。
容姿はちょっとお坊ちゃま系で少し小太りであった。
「花柳さん、今日もずっと隣で飲んでていいかな?」
「うん、いいわよ」
「良かった…」
大宮はそう言うと笑った。
美智は話始める。
「たけちゃんて、彼女いるの?」
「え?俺はいないよ…」