第4章 優柔と懐柔
『ねぇ、コナン君?ここって…』
外出禁止と言いつけられていたけれど、今から行こうと誘われた。
赤井のメンズ服とニット帽に黒髪のウィッグを渡されて着替えた。
連れてこられたのは、与えられたゲストルームから見える隣家、博士の家だと聞かされた場所だった。
『博士の家…?』
「そうだよ」
コナンに手を引かれて、博士宅へと招かれた。
「ついて来て」
『お邪魔します』と声を掛けると、いかにも博士然とした中年の男性が居た。
阿笠博士と紹介をされて挨拶をかわす。
博士を紹介したかったのだろうか?
が戸惑っていると、部屋の奥から人の近付いてくる気配を感じて視線を移す。
列車で出会った、あの妙に大人びた少女、灰原哀だった。
「彼女は灰原 哀、ベルツリーで1度「あなたとは知人以上の仲と言えばいいかしら、ミスティー」
コナンの紹介を遮り、灰原はのコードネームを告げた。
『…え?』
コナンと同じ年頃の少女に、"ミスティー"と呼ばれる状況には、さすがに混乱を隠せない。
どういうことかとコナンに視線を移した。
「…彼女も元組織の人間だよ」
『え、組織ってこんなに小さい女の子もいるの?碌でもないじゃない!!』
憤慨!と言わんばかりのに灰原は驚いていた。
組織で出会ったは、少なくとも感情を表にあまり出さず、人形のような表情でジンの傍にいた姿を思い浮かべた。
「あ、あのさん…」
「信じ難いと思うけれど…ある薬「灰原!良いのか?」…この人は大丈夫よ」
『…え、なに??』
「ある薬でね、身体が小さくなったのよ」
『へ??』
ある薬で身体が小さく…、この子は何を言っているのだろう。
「あなたの記憶障害の話は聞いているわ。あなたに頼まれて、私が作った薬を使うはめになったのね…。仕込んだでしょう、奥歯に」
『なぜそれを…』
にわかに信じ難い内容だった。
身体が小さくなるなんて現実では考えられない。
それでも奥歯に仕込んだ薬は、数時間前に取り戻した自身の記憶にある。
奥歯にある不自然なへこみも。
それを作ったのは、この灰原哀という少女だと言うのか。
顎に親指を唇に人差し指をあてて、少女を見つめていたけれど、ふと、視線をコナンに移した。