第5章 偶然と必然。
足腰が痙攣して、その場に腰砕けになりそうになる。
『も……、本ッッ当に無理…、動けない…』
彼と肌を重ねるのは3回目で、本当に何て抱き方をする人なのだろうと心の中で思う。
すっとぼけた可愛い顔をする降谷を、少し恨めしそうに見やる。
「ほら、お姫様、風呂に行こう」
冗談めかしながら横抱きにされて、首に腕を回した。
『苦しゅうない』
「ははっ」
呑気に笑う様に、くったりと身体を預けた。
バスルームへ入ると、対面になるようバスチェアに座らされて、頭を撫でて優しく唇を重ねられる。
シャワーの温度を確認してからシャワーフックの上に引っ掛けると、2人の頭にシャワーがかった。
『っぶ!』
「っふは!」
ついさっきまで雄の顔をして自身を抱いたとは思えない、まるで悪戯っ子の少年のような顔をしている。
そんな彼の頭を両手で掴んでワシャワシャとすると、ミルクティー色の綺麗な髪は水滴を弾いてキラキラと輝く。
格好良くて、可愛くて、たまらない気持ちがこみ上げてしまう。
『やだもう…好きすぎる』
声に出ていた。
キョトンとした顔で、こちらを見つめる。
「俺も、好きだよ」
両手で頬を包まれて、軽く唇を重ねられた。
その後は、甲斐甲斐しく世話を焼かれて、バスタイムを過ごした。
降谷といえば、まだまだ足りない、は我慢した。