第4章 優柔と懐柔
が眠りについてから間もなく、修学旅行から戻ったコナンが工藤邸を訪れた。
いましがたに起こったことを、赤井が話して聞かせた。
コナンの表情は険しくなった。
の記憶が戻ることで、こちら側からあちら側に戻ってしまう危険性は皆無ではない。
それでもの保護を決めたのは、赤井の頼みだったからだ。
実にらしくない頼み事に、その時がきてしまったら自らが始末をつけるということで今に至った。
規則正しい寝息をたてながら、の手がわずかに空を切った。
赤井はその手を掬いあげると、は握り返した。
その姿に、コナンからは険しさが抜け落ちた。
「子供なんだか大人なんだか…」
赤井の手を握りしめて寝ているさまは、幼い子供のように思えた。
「そこに惹かれる人間も多いがな…」
赤井らしくない雰囲気に、コナンは少しだけ居心地の悪さを感じた。
そしての記憶に関して気になったことがある。
「赤井さん、さんは思ったよりも組織の内部の人間?」
「組織的にはそこまでではない。ただジンのお気に入りの人形とは揶揄されていたな」
健全な少年には、少々刺激の強そうな話だ。
「ボウヤには早かったか…」
「いいけどさ…、安室さんとの関係はどうだったの?」
「関係性があったとしても、漏れるヘマは互いがしていないのだろう」
に関しては不透明な部分が多すぎる上に、思っていたより危険性の高い立場なのではないかと思う。
しかしそれは立場上であって…。
「さん自体は無害なんじゃ…」
「白に近いだろうな…」
「何の為に組織に所属したのか謎だね…」
「…全くだ」
2人はを見た。
「そういえば…赤井さんは何でさんを助けたの?」
「連れて逃げる隙が"運良く"できたからな」
「リスキーだったよね」
赤井は何も答えなかった。
しかし、コナンには。
リスクを背負っても、
隙を作ってでも、
助け出したかった。
そうとしか捉えられなかった。