第3章 予兆と微票。
「服とかは後で届けさせるけど、他に必要なものはない?何かあればメモに…」
メモ用紙とペンがテーブルに置かれた。
しかし、この場を取り仕切るのが小学生男児だとは、なんだかとても変な光景だと思う。
『コナン君、君は本当に何者なの?』
コナンは少年力全開な笑みを浮かべた。
「江戸川コナン、探偵だよ!」
きっと少年の言う探偵がごっこ遊びではないんだろうなと、なんとなくそう思った。
それにしても、探偵率が多い気がするのは気のせいではないような。
仮の職業が喫茶店スタッフの彼も探偵を名乗っているし、それなりに仕事もしているようだった。
たしか、迷い猫の捜索とか、そんなことをしていたような気がする。
忙しい身分なのに、余念がない。
今頃、どうしているだろう。
また忽然と姿を消したから心配をしているんじゃないか、傷つけてしまったんじゃないか。
こうして彼のことを思い出すたびに、脳裏に浮かぶのはあの列車でのこと。
どんな事情があったとしても払拭することができないくらい、にとってショックな出来事だった。
それでも気になってしまうし、幸福な時間を反芻してしまう。
頭の中も心の中も、ごちゃごちゃとなにひとつままならない。
彼から連絡はあっただろうか。
それを知ったところでどうにもならないけれど。
『スマホ…返してとは言わないけど…。彼からの連絡は…?』
「それを聞いてどうする」
ごもっともな意見に、睨み返してしまう。
そんなこと自身が一番良くわかっている。
本当にこの男は苦手だ。
「もう、昴さん…。追跡されたら困るから遮断してあるよ。でも爆発後に一度だけ着信はあったよ」
爆発後ということは、降谷が通話をかけられる状況にあったと言うことで、沖矢の言う通り無事なのだと安堵する。
彼は何を伝えたかったのか、今となっては知ることも出来ないけれど。
『そっか、ありがとう』
「さん、やっぱり安室さんと…」
ずっぶずぶの関係だけど、恋人同士だと断言するのは憚られた。
は曖昧な笑みを質問の答えとした。