第2章 錯綜と交錯。
スマホのアラームで目覚めると、安室はすでに起きていた。
彼の日常が元に戻る。
早朝のジョギングに筋トレを終え、シャワーを浴びてから朝食の支度をしていた。
『ん、おはよ…』
「おはよう、顔を洗っておいで」
朝食をとり、後片付けをし、身支度をし、安室のFDに乗り2人で出勤をする。
開店準備が終わると、店内も徐々に騒がしくなった。
開店早々、老若女女達で席は埋まりつつあった。
なるほど、これが安室目当ての、と思う。
お昼をむかえるころには、店内はすっかり満員御礼になって、忙しいけれど要領良く店内をまわせている。
そして梓の出勤時間となる。
挨拶をかわし安室とは退勤をする。
梓はあの一件より、近付いている2人の距離に気づいていた。
「さん、送ります」
『安室さん』
は周囲を確認してから、距離を詰めた。
『今からお仕事でしょ?無理しないで』
と、耳打ちをすると、手を握られ駐車場まで連行されてしまった。
『安室さ「零」
『零…、少しは休憩とか…』
「ここ2日間で休息できたからな、元気だ」
言われてみれば、以前よりは元気そうにも見える。
『なら良いけど…、私にも出来る事があれば言って』
「また泊まりに来てくれればいい」
『私はこの通り暇だから、いつでも!』
公安の仕事がお休みの前日に、また泊まる約束をした。
他愛のない会話をしているうちに、マンションに着いてしまった。
『ありがとう。気をつけてね、いってらっしゃい』
「いってきます」
FDの姿がが見えなくなるまで見送る。
2日間の楽しかった気分から、1人になる寂しさが一気に現実を帯びてしまう。
こっちが私の日常だと自分に言い聞かせた。
夕食に携帯用ゼリーを食べながら、なんとなしにテレビをつけた。
バラエティー番組だ。
画面の中の人達は楽しそうで、1人きりの寂しさは余計に増してしまった。
なんとも味気ない夜だ。
昨日の今頃は楽しかったのにな、と、ついつい感傷的になってしまう。
今日は早くに寝てしまおう。
潜り込んだベッドは、いつもよりもひんやりと感じた。