第2章 錯綜と交錯。
セミダブルのベッドで、身体はぴたりと合わさっている。
とてもあたたかい。
『私、こんなことになってから誰かと一緒に、こうやって長時間過ごしたのはじめて。ゲームも楽しかったし、お酒もおつまみも美味しかった』
「また、いつでも」
『そうね。今日は本当に楽しかった。連れてきてくれて、ありがとう。おやすみ』
「おやすみ」
腕枕をして、背中から抱きしめる。
この体勢で眠りにつくのは、2年以上ぶりの安室だった。
もそれを嫌がることもなく、そうすることがごく自然に感じられた。
2人とも緊張とは縁遠く、普段から眠りの浅い安室も安心しきったように熟睡した。
カーテンの隙間から差し込む朝陽で目を覚ます。
お尻にふれる異物感に気が付いた。
その正体を瞬時に理解する。
『!』
生理現象とはいえ、これは恥ずかしすぎると、身を捩った。
『…零?』
「………」
『ちょっと、零ってば…』
しかし、がっちりとホールドされた体勢から逃れるのは難しく。
なにより熟睡している彼を起こすのもかわいそうだ。
枕元に置いたスマホを手に取り、意識をゲームに向ける。
が起床してから2時間ほど経過した頃、何食わぬ顔で安室が目を覚ました。
その頃には腰にあたっていたものも無事にナリをひそめていた。
『私、朝食作るよ』
「え…」
安室にとっては意外すぎる一言だった。
2人で過ごしていた間に、がキッチンに立つことは無かった。
料理担当はもっばら安室だった。
は料理ができないものだと安室はふんでいたのだ。
鼻歌まじりでキッチンに立つを落ち着かない様子でスマホを片手にちらちらと。
手伝うと隣に立てば、大丈夫だと追い払われていた。
30分ほど経過すると、ぞくぞくとテーブルに運ばれてきた。
最後に緑茶が淹れられた。
安室が好きな和食だ。
ご飯 味噌汁 焼き魚 出汁巻き卵 セロリの浅漬け…見事な献立がテーブルにならんだ。