第2章 錯綜と交錯。
なるほど、と思う。
『まぁ、格好良くて可愛いし?』
そう思える程度には、ここ数日間で彼への印象はがらりと変わった。
「優しくて料理も上手ですよ?」
優しい…かはまだわからない。
あの外見に料理男子かぁ、なんだかギャップが可愛らしく思える。
『そうなのね』
「…興味ないですか?」
興味か…。
『どうかな…』
質問をされて、あらためて考えてみる。
おそらく興味はあるのかもしれない。
そうでなければ思い浮かぶことも、こうしてポアロへ足を運ぶこともないはずだ。
そっか、私は彼のことが気になっているんだ。
やわらかく微笑んだ降谷が、頭に浮かぶ。
しかしながら、梓の意図が全く見えてこない。
『…梓さんは?そこまで褒めるなら興味はあるでしょ?』
「なくはないですよ?安室さんといると安心しますし!」
『…なぜ私にそんな話を?』
「…聞かれたからです」
確かに、彼が休みかと聞いた。
それと梓との会話内容の関連性…、は、ひとつしかないのではないだろうか!
『好きなの?彼のこと』
ドストレートに聞いてみた。
「私は…」
カランコロンとドアベルがなる。
まるで少女漫画のようなタイミングだ。
人差し指を唇にあてて"しーっ"と合図を送られた。
「秘密です」
それからすっと立ち上がり、「いらっしゃいませ」と接客に戻っていった。
秘密か、きっと彼女も彼を好きなのかな。
なんとなく思った言葉は、無意識だった。
さて、彼もいないことだし、帰ることにしよう。
帰宅をしたら何をしようか、今晩も特に予定はないし、ゆっくりお風呂にはいってからルーフバルコニーで月見酒といこう。
ポアロを出て帰路についた。