第2章 錯綜と交錯。
『もし…家に爆弾が仕掛けられる事があれば、そのときは』
今一危機感に欠けるに、コナンの声のトーンが下がった。
「そうなってからじゃ遅い。本当に危険なんだ…」
『何もかも漠然としすぎているの。探偵なんでしょ、私。自分の置かれている状況をもっと見極めたいの』
「絶対駄目だ!!」
『ごめんね、コナン君』
"今はまだ話せない"彼らに嫌な返しをしてしまう。
ごめんね、は、好意に添えなくてごめんねと、意地悪な言い方してしまってのごめんねの意味を込めた。
『伝えるべきは伝えたし、帰ります』
コナンも沖矢も大きなため息をついた。
煙に巻かれる有耶無耶感は相変わらずながら、今回は有益な情報を得られたかもしれない。
なにせ、"記憶を失わせる力のある何か"に狙われているということを聞き出せた。
FBIによる保護の話が真実なら、組織犯罪とか、そんなスケールの話になるのだろうか…、"私"の立ち位置がそちら側ではないと思いたい。
そんなことを考えながら歩いていれば、ポアロと駅の別れ道に差し掛かっていた。
思い浮かぶのは、彼だ。
『安室さん、元気かな…』
あの時から、彼の事が妙に引っかかっている。
あんなことがあったし、気にならないのも不自然だけれど…。
ポアロの店内をのぞいてみると、安室の姿は見えなかった。
お昼をとうに過ぎたこんな時間だから、客もまばらだ。
ドアベルをならし足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ。さん」
『こんにちは、梓さん』
梓とは一度しか会っていないのに、すでに顔と名前を覚えてられている事に、さすが看板娘だと関心した。
『今日は、安室さんはお休みですか?』
「はい、しばらくお休みなんです」
『そうなの…あ、コーヒーお願いします』
本業が立て込んでいるのか、怪我などしてなければ良いなと思う。
「お待たせしました、コーヒーです」
『どうもありがとう』
トレーを手前に組んだままの姿勢で、笑顔で見つめられている。
『えっと…座ります?』
「お邪魔します!」
『どうぞ』
待ってましたと言わんばかりの勢いに、ふふっと笑みが溢れた。
「さんも安室さん目当てですか?」
『…へ?』
目当て…といえば目当てだけれど。
"も"?
「ポアロの女性客は老若女女、みーんな安室さん狙い!」
ほう。