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【名探偵コナン】Redo*misty【降谷 零】

第1章 記憶と感覚。


『ねぇ、あなたは私を知っているのよね』

安室は大きく息を吐くと、複雑そうな表情を浮かべた。

「…本当に何も覚えていないのか…」
『何に対しての"何も"なの』
「……」
『ごめんなさい、本当に良くわからないの』
「そうか…」
『ところであなたは私の何?』

見つめられたまま、何かを考え込んでいるようだ。
言い出しにくい内容なのだろうか…。
となると、あの説も濃厚になるかもしれない。
あくまでひとつの仮説をぶつけてみることにした。

『あなたってもしかして…"私"の元カレか何か?』

安室は明らかに動揺を見せた。
これでは案に正解だと言葉にしているのと同じでは…と思う。

「…君の事は知っている、…今はまだ話すことはできない」
『なぜ?』
「こちらにも事情がある」

こちら、とは、どちら?
聞いたところで答えてくれるとは思えない。
結局のところ、私に反応を見せたのは、安室というこの男のみだった。
彼だけが自身の、唯一の手がかりになってしまった。

今はまだ話せない、それならば今後訪れるであろうその機会を待つまで。

『…今は、話せることはなさそうね。駐車場まで送って』

何か言いたそうに口を開きかけた安室は、唇を噛みしめ言葉を飲み込んでいる。
そんな安室に背を向けて車に乗り込む。

行きと同じで会話もなくポアロの駐車場へ到着した。

車を停車させるなり、スカートのスリットに手がかけられた。

『ちょ、ちょっと何っ!?』

思いも寄らない出来事に思わず怯んだ。
しかし抵抗するも両手首を片手で抑え込まれ、少しくらいなら緩んでも良さそうなのに、彼の手も腕も振りほどけない。

ゆっくりと捲られるスリットをただ呆然と眺めていると、左腿に差し掛かったあたりで安室の手が止まった。

そこには本人ですら気づいていなかった"傷痕"が残されていた。

『ねぇ、この傷って…?』

掴まれていた腕が解放される。
その"傷痕"にそっと指が触れた。
優しく撫でられている。
慈しむような、そんな雰囲気だ。
全く読めない安室の行動に、徐々に呆れてくる。
"私"との間にどんな関係性があるのかはわからないけれど、数時間前に知り合っただけの男に、太ももを撫で回すなんて許していない。

『ねぇ?あなたパーソナルスペースがバグってるの?』

弾かれるように、身体ごと距離を取られた。
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