第4章 優柔と懐柔
がマンションへ戻ったのは夕方。
降谷は仕事を終えたのか、駐車場まで迎えに来ていた。
しかし駐車スペースには違う車が停められていて、窓を開けて降谷に声をかけた。
『ただいま、ねぇ、駐車スペースないんだけど』
「おかえり、そこだ」
指を差す方向に視線を流すと、高級車が並んでいたシャッター付きガレージが設置されている方だ。
降谷がリモコンを操作すると、シャッターが開いて、2台分のガレージの片側に降谷のFDが、そしてその隣は空いている。
『ここ?停めていいの?』
「今日からここに停めてくれ」
戸惑いながらも駐車させる。
車を降りると、ガレージ内と外にも監視カメラが数台取り付けられていた。
『これは…なんて厳重』
更に…部屋に戻るまで監視カメラも少しばかり増設されていた。
これで部屋の前にSPでも立たせれば、完全に要人扱いだ。
『…まるで要人扱いみたい…。もしくは危険人物扱い?』
「警官に銃口を向けて逃走をはかるくらいだ、危険人物か?」
多少なり怒られても良いと思うけれど、降谷は笑っている。
とことん自分に甘くて、そのせいで自惚れてしまうのだ。
『怒ってないの?』
「取り逃した部下は叱ったさ」
『あぁ…』
風見を思い出して、心のなかで謝罪をしておく。
ここから逃げ出した時は、またこんな風に彼と過ごせる時が来るとは思わなかった。
もちろん、彼との決別を覚悟した時も含めて。
今回はこの部屋に戻れることを、は嬉しく思う。
「」
名前を呼ばれて振り向くと、新しい鍵を2個もらった。
増設された鍵だ。
しかし外出禁止だと思っていたけれど、なぜ鍵を渡されるのか。
「本音を言えば、君をここから出したくはない、閉じこめておきたいくらいだ」
『私はそのつもりで戻ってきたけど…』
「そのためのGPSだ。ただ不用意には外出しないこと、スマホを必ず持ち歩くこと、出かける時には一報をいれること」
正直に言ってしまえば、終わりの見えない鳥籠の中の鳥はフラストレーションが溜まってしまう。
外出許可はこの上なく嬉しかった。
『嬉しい、ありがとう!』
「約束を守れるならだぞ」
『守る守る、大丈夫!!』
鍵を手に小踊りでもしそうなを前に、降谷を纏う温度が急降下する。
「守れるなら、だ」
降谷に向き直り、しかと誓った。