第4章 優柔と懐柔
拳銃をホルスターに納めた。
「、私達と行くわよ」
『ありがとう、助かったわ。そういうことだから』
風見を一瞥してジョディとエントランスを出た。
『車持って行っても?』
「かまわないけれど、外出はできないわよ」
『わかってる。でも愛車を置いていくのは、ね?』
FDの後方にはプジョーが停まっていてキャメルが運転席に乗っている。
更にその後には風見達の車が2台。
『後を追われても面倒ね』
は風見達の車に向けて、2発ばかり発砲する。
タイヤから空気の抜ける、間の抜けた音が聞こえる。
念の為にサイレンサーを着けておいて正解だった。
「大胆ね…」
『邪魔なものは潰しておかないとね。早くいきましょう』
風見達は慌てて車の下へ駆け寄って、スペアタイヤとジャッキを取り出している。
時すでに遅し…だ。
今からスペアに交換したところで、追跡は間に合わない。
誰かに電話をかけている…、きっと彼だろう。
『先導してもらえる?』
「えぇ、着いてきて!」
ジョディ達の後を追走する。
時刻はすっかり夕方で、帰宅車両が多いのか道は混み合っている。
事は驚くほどに上手く運べていて、イレギュラーさえ味方につけた気分だ。
首都高のジャンクションは目前、ジョディ達と自身の間に車を1台挟んだ。
『ばいばい、FBI』
は首都高に乗った。
ジョディが車から降りて何かを叫んでいるけれど、構わずに走り出した。
ETCでは足が付いてしまうから窓口を通過する。
こんな状況なのに笑いが込み上げてくる。
半ばヤケになっているのかもしれない。
行く宛もないし、首都高を降りたら海沿いでも走り続けてみようか。
はアクセルを踏み込んだ。