第4章 優柔と懐柔
「…さん?」
ふと声をかけられた。
『…コナン君』
少年がいた。
「どうしてここにいるの?その紙袋はなに?」
『ほら…、急に辞めちゃって迷惑かけちゃったでしょ?梓さんに挨拶にきたの』
取り繕うような困り顔で微笑っている。
「中に、入らないの?」
『うん』
「安室さんと何かあった…?」
『そうだね。でも良いんだ、彼が笑えているならそれでいい』
コナンが店内を見ると、梓と談笑している安室がいる。
公安に身辺保護が移ったとコナンは聞いていた。
それがなぜポアロの前で、思い詰めたような横顔で安室を見つめていたのか。
2人の間に何があったのだろう。
『あ、これ梓さんに届けてもらってもいい?』
花壇に置いた紙袋をコナンに手渡した。
「いいけど…、さんはそれでいいの?」
『うん、皆さんにご迷惑おかけしましたって伝えてもらえると嬉しい』
「わかったよ…」
はそう言い残すと、車に乗り込んで走り去った。
コナンは降谷の元へ向かった。
ポアロのドアベルがなって、いつも通りの挨拶をすませる。
「安室さん、ちょっといい?」
「なんだいコナン君」
紙袋を手渡す。
「これ、さんから。ご迷惑おかけしましたって」
「届けてくれてありがとう」
安室から動揺は伺えない。
本来なら保護をしているなら外出なんて許さないはず。
の立場を考えれば尚更だ。
「ねぇ、安室さん。移ったんだよね」
『何の話だい?』
「とぼけないで、さんだよ」
「君には関係のないことだ」
安室の瞳からすっと温度が消えて、コナンの背筋が冷やりとする。
しかし怯まずに告げた。
「安室さん次第では…さんを赤井さんの下に返すよ」
「っ…」
赤井の名前に反応をした安室を、更に畳み掛ける。
「さん…安室さんが笑えてるならいいって言ってたよ。まぁ…戻すまでもないかもしれないけどね」
コナンはそう忠告残してポアロを後にした。
おそらくと安室、赤井の間で何かが起こった…大人の事情的なことが…、たぶん。
それにの行動パターンを考えれば、分かるはずだ。
十中八九、は姿を眩ませると予測する。
コナンはスマホを手に取って、赤井に通話をかけた。