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【夏目友人帳】海底の三日月

第4章 お伽話の法則


水の音。雨?シャワー?怖くて目を開けない。
「…Regen…」
「ん?なんですか?」
無意識のつぶやきに返事が返ってきたが大して不思議にも思わなかった。
日本語の問いかけに、思考がドイツ語から日本語に切り替わる。
「雨?雨が降っているの?」
「ええ、降っていますよ」

目を開けると的場さんがいつもの微笑でのぞきこんでいた。
「妖怪にあてられたんです。もう少し横になっていなさい」
「…」
「手荒なことをしてすみませんでしたね。でも、もう毒気は抜けましたよ」

左手を見ると、手首に呪符が巻いてあった。
「それは、君がここから逃げられないようにするためについでに付けた呪符です。普通の人には見えないので安心して下さい。門限は夜7時。それまでに邸に戻らないと手首が落ちますから忘れないように」
端をめくろうとしたが、少しもはがれなかった。

「それは君を私に繋ぎ止めるものなので私にしかはがせません」
私に見えるように挙げた彼の手首にも似たような呪符が巻いてある。

「手に、怪我をしています」
手の甲のちょうど中指の付け根の関節が赤くなっているのを指摘すると
「そうですね。どこかにぶつけたんでしょうかね」
と首をかしげる彼。

「妹が、来ませんでしたか?」
「ああ、それで出て行こうとしていたんでしたね。あの男の嘘ですよ。君のお姉さんに確認したら、ホテルで一緒に映画を観ていると言っていたので大丈夫です」
「そうですか、ありがとうございます」
確認までしてくれているとは。

「あの男の式が見ていたので多少大げさに責めましたが、君の行動に腹を立てているのは本当ですよ。君の目なら妖怪が取り憑いていることは見抜けたでしょう?妹が来ているはずなどないとわかるでしょうに」
「呪いをかけられるなら、妹だと…」
的場さんが初めて驚いたような顔をした。
「妖怪にあてられたわけじゃなく、呪いをかけられたんですよね、私は」

「気づいていたんですか…。まあ、祓い屋の間ではよくあることです。的場の勢力を削ぎたい者と君の伯父との間で利害が一致したのでしょう」
「…そうですか。ご迷惑をお掛けしました」
「べつに構いません。言ったでしょう?よくあることなんです。大したことじゃない。それに最近一般人に呪いを提供している祓い屋がいて目障りだったので、そういう輩の一派を掴めたのはこちらとしても結構な収穫でしたし」
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