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【夏目友人帳】海底の三日月

第3章 昏蒙のアリス 後編


「昨日も一昨日も急いでいたので、一方的にこちらの話を聞いてもらいましたが、君のほうも訊きたいことがあるでしょう。知りたいことがあればお答えしますよ」
知りたいこと…
毎日忙しいのかとか?
右目はどうかしたのかとか?
祓い屋とはどういう仕事なのかとか?
「…段ボールはどこに捨てたらいいんですか?」
数ある質問の中から1番に選んだ質問は、口に出したら妙な顔をされた。
「…脱衣所の近くの階段下にまとめておいていますが…すみません、それを1番に訊かれるとは思わなくて…他に気になることがあるでしょうに…」
大きなお屋敷の主は自分で段ボールを捨てたりしないのかと心配したけれど、そういうことではないらしく、苦笑いされた。
「…現在から未来に向けて予定を時系列で並べた時に、現在に近い順です」
「なるほど」
と答えた彼は、本当に納得したようには見えなかった。

「あと…高校はどうやって決めたらいいんですか?」
それが今1番の懸念事項。
「ああ、それでしたら、いくつか募集要項を取り寄せてあります」
的場さんは一度立ち上がって、部屋の隅の机から封筒を5つ持ってくる。
「共学がいいんでしたよね?これは女子校なので省きます」
封筒を一つ脇に置く。
静かに司るで『静司』。
封筒の宛名を見て初めて、彼の名前の書き方を知った。
「綾目高校からの編入だと、この2つがちょうどいいレベルかとは思いますが、こっちは少し遠くて、始業時間も早いので通うのが大変かもしれません」
的場さんが封筒からパンフレットを出してくれたので、私は封筒の宛名を見ていた視線をパンフレットに移した。
た。
「この2つは綾目高校よりレベルは落ちますが、進学と就職の生徒がほどよくいるので、それほど勉強が忙しくはないかと思います」
「……やんちゃなタイプの人があまりいないところがいいなと思います…」
とにかく平和に過ごしたい。
「あはは、そうですね。進学校はたぶんそういう生徒はいないと思いますよ。この2校に関しても、あまり荒れてるイメージはないですね。少なくとも私が高校生だった4、5年前は特に当たり障りのない生徒が多い印象でした」
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