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【夏目友人帳】海底の三日月

第3章 昏蒙のアリス 後編


「真っ暗にしていたんですね」
部屋の明かりがついて、人が入ってきた気配。
木札並べ91枚目。
「真っ暗なままで並べたんですか?」
「……」
木目44本の木札は全部で5枚でこれが最後の1枚。
どの面の木目も91の約数になっているので、91番目に相応しい。
トンッ!カタカタカタカタ!
木札がドミノ式に41番目まで倒れて初めて、的場さんが格子から手を入れて13番目の木札を押したことに気づいた。
それでも…次は木目43本、1枚。
次は木目45本、2枚……
…最後、95枚目。
倒れた木札を直そうとしたら、カタカタと2枚倒れてしまった。
ああ、43番目も倒れた。
結局双子の両方とも…。
倒れたものを直すのは簡単…ただの木札ならば。

…何か訊かれた?
ハッとして、耳に残った音声の記憶を思い起こして、それでも顔を上げずに答える。
「…一度見たものは忘れないから、見なくてもわかります」
「…完全記憶力というのは、本当だったんですね」
2.2秒ほど間があって、驚いたような的場さんの声が返ってきた。
「完全ではありません。忘れないけれど、間違って覚えることはあります」
倒れた最後の43番目と倒れなかった44番目が逆だと気づいたけれど、直さないことにした。
顔を挙げると彼は木札から私に視線戻したところだった。

「そうですか。どちらにしてもすごいですね」

身体は相変わらずだるいけれど、木札並べに集中したのと目が冴えてきたのとで思考はクリアになってきた。
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