• テキストサイズ

【夏目友人帳】海底の三日月

第2章 昏蒙のアリス 前編


入浴後、自室に戻っても、荷解きする気にもなれず、横になって悶々と考える。

疲れた…。
彼が嫌なわけじゃない。
嫌かどうかもわからない。
でも、疲れた。
初対面の人と話すのは苦手。
人がたくさんいるようだけど、その中で何かしなきゃいけないのだろうか。
ああ、心を許せる人とだけ一緒に過ごしていけたらいいのに…。
心を許せる人なんて、いる?
ああ、誰とも話したくない。

雨が降っている。
人の声が聞こえる。
何人いるのだろう。
5人?8人?
何を話しているのだろう。
雨で聞こえない。
嫌だな…注目を浴びるのは、好きじゃない。
学校での陰口も、本当は、嫌だったんだ…。
目は閉じられるけれど、耳は閉じられない。
ああ、雨で聞こえない、聞きたくない。

私はどうしたらいいんだろう。
私はどうしたいんだろう。
妹は大丈夫だろうか。
疲れた。

ここにいるのが、息苦しい…。
家にいるのも苦しかった。学校にいるのも…。
どこに行きたいのかもわからない。
どこにも行けない。
疲れた。
もうずっと眠っていたい。
本当は、ずっと前からつらくて、胸が痛くて、息が苦しい。
心が、疲れた。

本当は、通学路に罠をはるあの大きな妖怪に、食べられてしまってもいいと思っていたのに…。
ああ、疲れた。
もう、ずっと眠っていたい。
…眠れない。
眠ると、朝がきてしまう…。
なんだか、とても、苦しい…。
/ 44ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp