第9章 episode.9 君が好きだよ。
「…ん。おいしい」
一口粥を食べてから、ふんわりと微笑むユリを見ると、つい頬が緩む。
彼女が笑う顔が心底好きなのだと改めて感じた。
「よかった。食べられそうか」
「はい。食欲が戻ってきました。…ありがとうございます」
俺の作った粥を食べてくれたことが嬉しくて。
つい、ダイニングテーブルを挟んで向かいの椅子に腰掛け、じっと彼女を見つめてしまった。
「君の目…」
「目?なんかついてます?」
「いや、そんなことはない。何でもないよ」
「…?」
つい。
化粧をしていなくてもクリクリと丸っこくて、澄んだ瞳をしていて可愛いと口走りそうになった…とは言えないな。
いつもは朝からしっかり身支度を整えて、俺には出来る限り素顔を見せないようにしている彼女だが、今は流石に体調を回復させることを優先したんだろう。素顔のまま。…化粧もしていなければ、服もふわふわのパジャマ姿で、おまけに軽く寝癖もついている。
ありのままの素顔の彼女はいつもよりあどけない表情をしていて…それがまたいいな、なんて思っていた。
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彼女が食事を終えて、薬を飲んで、寝る準備を整えて。
再びベッドに入るまでを見届けた。
俺は…仕事から帰宅後、そのまま息つく間もなく看病…そして慣れない料理などをして。
彼女が寝ている間、軽くシャワーを浴びた程度で、他はこれと言って休息は取っていない。
いくらショートスリーパーで長時間起きていても無理が効くよう鍛えているとは言え。
流石に少し疲れたな…
「…ふう」
思わずため息をつくと、ウトウトと今にも眠りそうだったユリが申し訳なさそうな顔をした。