第8章 episode.8 熱
シュウさんは、食事の後すぐに仕事に向かっていった。
また1人の夜。寂しいな。
もう…シュウさんは夜に帰ってくることはないんだろうか。夜勤多いな。
そんなふうに思いながら、私はベッドに潜り込んだ。
そう言えば…昨日はやっと、うなされることなく寝ることができたんだよね。
ソファでウトウトしてから、ベッドに行くまでの記憶はないんだけど。
でも、きっと今夜も大丈夫でしょう。
「おやすみなさい」
誰もいない部屋で、ポツリと呟いて。
瞼を閉じた。
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次の朝…
目が覚めたら…
あれ…?
瞼が重くて開かない。
それに、体のいたるところが痛くて、鉛のように重くて…
とてもだるい。
寝起きのだるさとはまた違う。
「ん…」
ゆっくりと目を開けて、ようやく状況を理解した。
…風邪、引いたかも。
起き上がれない。
「…寒い…」
分厚い掛け布団に包まれているはずなのに、体が凍えるように寒かった。
どうやら発熱しているらしい。
…昨日、シュウさんにキスされて、なんだか体が熱っている気がしたけど。あながち間違いではなかったようで。
どうしよう…
1人ぽっちだし、知らない土地な上、言葉も通じないから病院にかかることもできない。市販の常備薬の持ち合わせもない。SOSを出せる家族や友人も近くにいない。
急に不安になってきた。
思わず涙が溢れる…
頬の横をツウっと伝っていった。
「シュウさん…はやく帰ってきて…」
寝室の壁掛け時計を見上げると、早朝5時。
シュウさんが何時に帰ってくるかなんて…わからない。
余計に、不安が増していった。