第8章 episode.8 熱
「4日後か…」
シュウさんはスマホを見てそう呟いた。
カレンダーでも見たのかな?
4日後といえば、12/24。クリスマスイブ…?
「イブの晩、イルミネーションでも見に行くか」
「えっ」
「4日後はもうアメリカ滞在終盤だろう。最後にどこか好きなところに連れていってやる」
シュウさんは、いつもと変わらない様子でそう言った。
なんで…
「なんで…そこまでしてくれるんですか」
ずっと。
出会ってからずっと。
あなたは常に、優しくて。まるで家族や恋人みたいに寄り添ってくれる。
それが本当に不思議でならない。
「………君は…。なんだか妹みたいに思えてな。つい世話を焼きたくなる。そんなところだ。」
あくまで妹みたいな存在。
その程度に見ているよ。そう言いつつ、彼の目は寂しそうだった。まるで、彼が自分自身に言い聞かせているように聞こえた。
…シュウさん?本当は何を思っているの?
だって…つい昨日も似たような質問…なぜ優しくしてくれるのかを問うたけれど、その時は「俺にもわからん」と言っていたじゃない。
…何か他の理由があるんですよね?
本当は聞きたくて、堪らなかったけど。
…あと数日の関係。踏み込みすぎてはいけない。そんな思いが足止めしていた。
「行きたくないか?無理には連れ出さんよ」
「…いえ。行きたいです。ぜひ」
「そうか。ではイブの夜は空けておいてくれ」
「はい、ありがとうございます」
クリスマスイブの予定ができてしまった。
そういえば、当初の予定だと元彼とデートするつもりだったんだよね。クリスマスプレゼントまで用意して来ていたんだった…。スーツケースの奥に仕舞ったままだけど。
数日前、まだ元彼と別れるだなんて1ミリも思っていなかったあの時の私が知ったらびっくりする展開に違いない。
まさか、出会って数日のフルネームも素性もよく知らない男性とイルミネーションを見に行くことに…なっていようとは。
人生とは何が起きるかわからないものね…。
人ごとのようにそんなことを思ったりした。