第8章 episode.8 熱
「…あの。テレビをつけてもいいですか」
一緒に食卓を囲んだはいいものの、沈黙と…気まずい空気に耐えかねて。
「…別に構わんが…言葉わかるのか」
「わからないけど…何となく。」
うう…
でも、本当に気まずいんだもん。
目の前で食事を進める彼の口元につい、目線が持っていかれる。そして昼間の気まぐれなキスを思い出す。
その度、頬がかーっと熱くなって…耐えられなくて。
言葉はわからなくても、まだテレビを見ているフリをしている方がマシだなんて思ってしまう。
苦し紛れにテレビをつけた…
多分、こちらのニュース番組なんだろうな。ということしかわからないけど…何も音がないより何百倍もマシだった…
テレビありがとう。あれほど言葉がわからないテレビは退屈だなんて思っていたのに。今となっては感謝しかないわ…
シュウさんも何となくテレビを見ながら食事を進めてくれているおかげで…ちょっとだけ気まずさが和らいだ気がした。
そんな中、ニュース番組で流れたとある映像に、私は釘付けになった。
それは…画面越しにもわかるほどの、とても綺麗なイルミネーション。
きっと、有名なイルミネーションスポットなんだろうな。
キャスターのお姉さんがワクワクした表情で紹介している…ということが、言葉はわからなくても伝わってくるもの。
「すごい…綺麗…」
つい、声に出してしまうと。
「ここから近いよ」
そう、シュウさんから言葉が返ってきた。
案外、普通だった。あれ?意識しているの私だけだった…?
「そうなんですか?」
「ああ…車で15分くらいだな。とは言えこの時期になるとどこもこんな感じだが」
「もうすぐクリスマスですもんね」
そういえば、元彼に会うためにクリスマスに合わせてアメリカに来たんだったわ…