第8章 episode.8 熱
episode.8
熱
(ユリ side)
シュウさんの様子がとにかく変だった。
昨日、うちを出ていく時に多分…頭?髪…に、キスされたあの時から。
あの時の動揺した様子。帰ってきてからもなんだか元気がなさそうで。目も合わせてくれないし、ご飯もいらないと言った。
何だか距離を置かれているのかもしれないとまで思った。
それならそれで…うん。
仕方がないこと。たった10日間の関係だし。
深く関わらないに越したことはないんだから。
”無理に近付く必要なんてない”
数日前の出会ったばかりの私だったら、そう思っていたと思う。
でも…今は何故かそんな気持ちになれなかった。
なんだか距離をおかれたかも?と思うとチクリと胸が痛くなったし、寂しい気持ちがした。
それに、シュウさんが食欲も湧かない程元気がないのなら…とても心配。
モヤモヤして、黙ってはいられなかった。
話しかけたい…
何か彼に近付くキッカケがほしい…
そう考えて、思いついたのが外出するということだった。
外出する時はシュウさんに行き先と帰る時間を伝えるという約束だったし。不自然じゃないよね?
…ってあれ?なんで私こんなに慎重になってるんだろう?
まあ…いいや。
どこか出かけよう。
ただ「わかった」と一言返事が返ってくるだけかもしれない。何も変わらないかもしれないけど…でも、何かせずにはいられなかった。
そうすると…
意外なことに、一緒にパン屋さんまで来てくれることになって…ついでに、気になっていた彼の名前まで知ることができて…
そしてそして。
何故か…
キスまで…された。