第7章 episode.7 壊れた鍵
君と距離を置くべきだ、と思うほどに…悩んだんだぞ。
先程まで、どう接すればいいかわからなくなる程になっていたんだぞ。
必死に押さえ込んでいる感情が爆発しそうになる…
そんな状況で…
惚れた子に自分のことを知ってほしくない男がいるか?
「……いたらお目にかかりたいくらいだな」
「…へ?」
なんの話をしているのやら、と言わんばかりの彼女がポカンと首を傾げていた。
その気の抜けた表情すら…俺にとっては…。
「ああ、もう」
小さく、俺は呟いて。
手のひらを彼女の頬に伸ばした。
親指と人差し指で挟み込むように、ムニュ、っと片手で彼女の両頬を軽くつまんでやる。
我ながら子供っぽい意地悪だとは思うが…
こんなことをされたら大体どんな整った顔も台無しになるんだぞ。
そう思い、してやったのに。
「ふえっ、なにするんれふかっ」
わたわたと慌てて俺の手首に小さな手を回して、離そうとしているその姿。頬を寄せられ、決して可愛い表情ではないはずなのに…。
かわい…い…とは。
俺の目にフィルターでもかかったか…?
「信じられんな…」
「えっ?な、なに?シュウさん?さっきから…っ」
やっぱりなんか変ですよ?と言いながら、彼女はようやく俺の手を掴んで避けた。
「もー、なんですかっ」
「…つい。」
「ついって、理由になってないですけどっ」
なんて…小さく言い合っている間に、パンが包み終わったらしい。
店主がにっこりと微笑みながら、パンの入った袋を手渡してきた。
慌てて受け取ると、店主に『お熱いね』と言って勘違いをされて。『そんなんじゃないです』と否定しつつ店を出た。
…ユリが英語をわからなくて本当に良かった…